2009年7月6日月曜日

帝国と付き合う方法

希望と変革の星、バラク・オバマが大統領になっても、軍事大国アメリカの帝国的な本質にはさほどの変化はないようです。本稿では、論客チャルマーズ・ジョンソンが米軍基地を受け容れている国ぐにに対して現実的な知恵を示します。これはもちろん、膨大な軍事基地をかかえるわが国にとっても無縁の話しではなく、とりわけ総選挙を目前に控えたいま、わたしたちにひとつの視点を与えてくれるでしょう。ゆいま

凡例: (原注)〔訳注〕 

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原文200972日投稿

トムグラム:

チャルマーズ・ジョンソン、根拠のない出費を語る

〔トム・エンゲルハートによるまえがき〕

アメリカの肥大症を競うレースに、ツノウサギ画〕jackalope=架空動物、シカの角を生やしたウサギ〕に跨ったカウボーイや貨車に平積みした巨大果実画〕の絵葉書と並んで、まったく新規なエントリーがある。パキスタンはイスラマバードに建設される米国大使館合同庁舎がそれだ。なにしろ――このようなプロジェクトの正常な予算超過を考えてみよう――10億ドルに迫るという代物である。これで米国が帝国的傲慢レースにおいて未来永劫の覇者にならないとすれば、どの国がなるのだろう? 疑問はこうだ――「大規模な軍事・諜報派遣隊」が計画され、外交官が「増派」されるにしても、その大使館は地球上最大のビザの発給もするのだろうか?

奇妙なことがある。大使館の話しはマックラッチー・ニュースの優秀な記者たち(今回は、ウォーレン・P・ストローベルとサイード・シャー)が5月の末明かした。両記者は、大使館建設予算の73600万ドルが上下両院でだれの苦言を受けることもなく粛々と通ったと両記者は伝えたが、これはクリスチャン・サイエンス・モニター紙上でシャーが報道した「アフガニスタンとパキスタンにおける米国の外交的存在感の修復」に驚愕の推計20億ドル割り増しの値札」の一部である。けれど、このニュースは深い沈黙の井戸に落ちこんだようである。オバマ政権がこのような帝国規模の巨大施設の建設を決定したことは、わが国がAf-Pak(アフガニスタン=パキスタン)戦域で戦線を拡大し、より長期にわたって関与していくことを示しているが、あきらかにだれもこれに関心を向けていない。

この報道は広く話題にされたり重視されたりはしなかった。メジャー報道機関がパキスタン駐在スタッフを増強してきたという事実にもかかわらず、予算割り当てや大使館計画、あるいはそうしたものが意味するかもしれないことに対する追跡報道は見当たらない。わたしに言えるかぎりでは、米国中、どこの主流メディア社説面も、ことのなりゆきを非難したり疑ったりしていないし、議論すらしていない。チャーリー・ローズ〔公共放送ネットワークPBSインタビュー番組司会者〕はこれを考察するために専門家を招集しなかったし、ジム・レーラーのニュースアワー〔やはりPBSの全米ニュース番組〕もこれを追及に値しないと考えているようだ。喉から手が出るほど欲しい資金がイスラマバードに流れると人たちの怒りの手紙も地方新聞に寄せられなかった(たぶん、ごくわずかの人しかなにが起こっているのか知らなかったせいであり、記事を見た人も、危険に満ちた世界で米国を安全にすることについての退屈な報道のひとつにすぎないと思ったせいであろう)。わたしは資金の承認に明白に反対する議員の企てをまったく見ていない。一般的な態度は明らかにこうだ――現地に行って、任務を果たした(実際には、ブッシュ時代にイラクついて言われたこと)。

1兆ドル近くの企業救済が当然とされる世界では、大使館要塞に使われる10億のたったの4分の3はたかだか雀の涙ほど、デモクラシ・ナウ!だけが重要だと考える類いのニュースであると思える。幸いなことに、米軍海外基地の専門家にして報復シリーズ三部作の著者、チャルマーズ・ジョンソン日〕が気づき、その重要性を理解し、彼の照準に捉えた。(基地の帝国に関するジョンソンのトムディスパッチ音声インタビューをどうぞ:MP3 ファイル) トム

アメリカの基地帝国に対処する方法

米軍基地受入国のためのささやかな提案

――チャルマーズ・ジョンソン

米基地帝国は――もとより年間1020億ドルに達するという世界で最も高価な軍事活動であるが――さらにうんと高くつくものになった。手始めに、527日、わたしたちは国務省がパキスタンのイスラマバードに新しい“大使館”を建設することを知った。その建設費73600万ドルは、超過費用が発生しないとすれば、ブッシュ政権がバグダッドに造ったヴァチカン市国サイズのものにたかだか400万ドル足りないだけ、史上2番目の額である。国務省はまた、領事館および職員の居住用に使うため、アフガニスタン国境近くのペシャワールにある五つ星ホテル、パール・コンティネンタルを購入すると報じられている。

このような計画にとって由々しきことに、69日、パキスタン人武装勢力が爆発物を満載したそのトラックをそのホテルに突っ込ませ、宿泊客18名を殺害し、少なくとも55名の負傷者を出し、ビルの一翼全体を破壊した。その後、それでも国務省が購入を進めているかどうかについて、報道はない。

これらの建物のどちらも純然たる大使・領事館――つまり、現地の人たちがビザを申請しに訪れ、アメリカ人職員が母国の商業的・外交的利益を代表する場所――として設計されていないというのに、また経費がどれほどかかることになっても、それはわが国のすでに膨れ上がっている軍事予算に含まれていない。それどころか、これらのいわゆる大使・領事館は、じっさいには壁で囲まれた複合施設、中世風の要塞の同類になろうとしており、そこではアメリカのスパイ、軍人、諜報部員、外交官たちが戦争地域の敵対住民に監視の目を向けることになる。これらの施設が大規模な海兵隊派遣軍を収容し、迅速な脱出のために屋上ヘリ発着場を備えることは確実に予言できる。

危険な場所で仕える国務省公務員たちがなんらかの物理的手段で防護されることになると知れば、心強いだろうが、彼らの目に、また彼らの任地の国ぐにの人びとの目に、彼らが公然たるアメリカの帝国的存在感の目に見える部分になることもまた歴然とするはずである。わが国の基地に似た大使館がどれほど厳重に防御されていても、米国を攻撃する武装勢力がそれを大規模軍事基地よりも攻撃しやすい標的であると気づいても驚くことはない。

では、地球上いたるところに――いま他の人びとの国ぐにの800か所に迫って――散在する軍事基地に対して、なにが行われているのだろう? 議会とオバマ政権が、銀行救済、新しい医療計画、汚染抑制のためのコストや、他の切に求められている国内支出を巡って論争している一方で、これら不人気で高価な帝国領有地のいくつかを閉鎖するのは、いくばくかの金を節約する良策であると提案する人はいない。

それどころか、明らかに軍事基地はさらに金のかかるものになろうとしている。中央アジアの元ソヴィエト共和国、キルギスタンはかつての20092月に米軍をマナス空軍基地(2001からアフガン戦争の兵站集結地として使用)から追い出すと宣言していたが、623日、駐留継続の説得を受け入れたことがわかった。だが、獲物は次のとおりだ。わが国に供与する好意の見返りに、ワシントンが支払う基地使用料は年間1740万ドルから6000万ドルへと3倍以上に増額され、空港施設改善の約束、その他の財政面での甘い餌に何百万ドルもの金が使われることになる。これはすべて、オバマ政権が地域の戦争を広域化する姿勢を鮮明にし、この基地がアフガニスタンへの兵站物資の貯蔵・中継地として必要であると確信しているためである。

アメリカ人がやはり不人気な占領者である他の国ぐにで、このなりゆきが気づかれないままであるとするのは疑わしい。たとえば、エクアドル人は本年11月までにマンタ空軍基地から出ていくようにとわが国に通告した。コロンビアとペルーでアメリカ兵がうろついているのをエクアドル人が嫌っているという事実を言うまでもなく、もちろん、彼らには考慮すべきプライドがある。それでも、彼らはもっと多くの当座の金を使うこともできただろう。

では、57年以上にわたり、自国内に米軍基地を置いておくために大金を支払ってきた日本人らはどうだろうか? 最近、日本政府はワシントンと、在沖縄基地の米軍海兵隊の一部を米領グアムへ移すという合意に達した。しかしながら、交渉過程において、日本政府は海兵隊の転出経費だけでなく、グアム転入のために新しい施設を建設するための費用までも負担することを強いられた。いま日本政府がキルギスタン政府の範にならって、アメリカ人に出て行ってくれと言い渡し、その費用は自分持ちだと告げることは可能だろうか? あるいは、少なくとも日本政府が、(1か月に2件の割合で)日本女性をレイプし、沖縄にある38の米軍基地の近くに住む人びとみなの暮らしを惨めにしている、その米軍要員のために金を出すのをやめるようなことがあるだろうか? これこそ確かに、1945年にわが国が登場して以来、沖縄人が願い、祈ってきたことなのだ。

実は、わたしには、自国内の米軍駐留に少しばかりうんざりしている他国の人びとに向けた提案がある。手遅れになる前に、いま米軍駐留を金にするのである。要求を吊り上げるなり、アメリカ人に出ていくように言うなりするのである。わたしは、遠からず米軍基地帝国がわが国を破産させると確信しているので、このような行動をお勧めするのだ。だから、あなたが投資家であるなら――金融バブルやマルチ商法のひそみにならって――できるうちに金を手にした方がよい。

これは、もちろん、中国その他の米国債融資国に起こったことである。まだ大量に保有しているドルを暴落させないように、国債をひそかに時間をかけて現金化しただけの話しだ。だが、間違えてはならない。わが国の出血が急激であっても緩慢であっても、わが国は血を流しているのであり、わが国の軍事帝国、およびそれに付随する基地のすべてに執着するなら、究極的に、わたしたちの知るような米国の終焉が宣告されるであろう。

上記の理由により、これから何十年か先に海外を旅する未来の世代のアメリカ人は、10億ドルに迫る“大使館”があちこちにある光景を目にしないであろう。

アメリカ帝国の悲劇〔筆者〕チャルマーズ・ジョンソンは報復三部作――『アメリカ帝国への報復日〕』(2000年)、『アメリカ帝国の悲劇日〕』(2004年)、“Nemesis日〕”(2006年)、原書はすべてメトロポリタン・ブックス刊――の著者。米軍基地帝国に関するジョンソンのトムディスパッチ音声インタビュー:MP3 ファイル

〔原文〕Tomgram: Chalmers Johnson, Baseless Expenditures

Copyright 2009 Chalmers Johnson

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